建築基礎設計士とは

資格の必要性

建築物に必要不可欠な基礎構造。その設計を行なうには、基礎構造はもとより、土質力学や上部構造、施工性やコストなど専門的な広い知識が必要になります。米国では一定規模以上の構造物については、上部構造を担当するSE(Structural Engineer)とともに、基礎構造は高度な専門知識を持つGE(Geotechnical Engineer)のチェックが義務付けられています。

日本ではこのような基礎構造に特化した資格はなく、一級・二級建築士や構造設計一級建築士などを持つ構造設計者が基礎構造も含めて設計することになっています。しかし、建築系学科に地盤工学や基礎構造学を専門とする講座が少ないこともあって、構造設計者には上部構造の設計には堪能でも基礎構造の設計は苦手な方も少なくありません。基礎構造の設計の基本となる土質力学では、鋼材やコンクリートなどと比べて材料特性のばらつきが非常に大きい地盤を相手にすることや、有効応力など他の分野にはない概念が多いことから敬遠されるようです。また、基礎構造の設計を提案することが多い基礎専門建設会社などの技術者も、大半は建築の構造設計に関する資格を持っていません。

資格制定の経緯

そこで、基礎構造物の設計に関する資格について検討するため、2006年に社団法人建築研究振興協会内に「基礎設計士制度諮問委員会(委員長:岸田英明東京工業大学名誉教授)」が設立され、資格のコンセプト・資格認定試験の運営方法・試験問題・テキストの内容などについて検討されました。また、並行して資格認定試験も3回試行されました。その結果、基礎設計士制度は、設計担当者の能力向上だけでなく、営業・工事・技術などの担当者にも基礎の設計やその基本になる土質力学や基礎構造などの勉強に非常に有効であることが確認されました。

2年間の検討と試行のあと、2008年に試験を運営・実施する「建築基礎設計士試験運営委員会」が、社団法人建築研究振興協会の受託委員会として設立されました。この委員会は、2012年度からは新たに設立された本研究会に引き継がれています。

建築基礎設計士試験運営委員会

本会が設置している「建築基礎設計士試験運営委員会」では、テキストの編集・発行、試験問題の作成、試験の受付・実施・採点、合否判定、合格書証授与、登録手続き、登録証発行、実技・更新講習の実施など試験の運営全般を行っています。

現在の委員は、下記のとおりです(2019年)

委員長 冨永晃司(広島大学名誉教授)
委 員 松尾雅夫(安井建築設計事務所)
阪上浩二(山下設計)
今枝裕貴(日建設計)
大西智晴(不動テトラ)
沼田太樹(アサノ大成基礎エンジニアリング゙)
事務局 小椋仁志 (基礎構造研究会)

建築基礎設計士試験・同士補試験

以上の経緯で誕生したのが、基礎構造の設計力を客観的に評価するための建築基礎設計士試験および建築基礎設計士士補試験です。構造設計者の土質力学・地盤工学の習得、および基礎専門建設会社などの技術者の技量の確保・向上などを目的として行われています。

建築基礎設計士試験は、設計経験2年以上または建築基礎設計士補に登録されている方は受験できます。合格要件は、「土質力学や基礎構造に関する知識を十分に持ち、与えられた条件下での最適な基礎工法を提案する技術検討や、施工可否・コスト比較等を独力で行うことができる。また、建築基礎設計補に対して指導・助言ができる。」としています。試験は学科試験(一次試験)と面接試験(二次試験)の2段階です。

学科試験(一次試験)
基本問題(2.0時間):基礎設計に必要な詳細な知識
実技問題(2.5時間):最適な基礎設計、コスト管理等

面接試験(二次試験)
一次試験合格者に対して約20分間の面接
:顧客への提案・説明、トラブル対処法等

一方、建築基礎設計士補試験は、17才以上であれば専門分野や経験年数などに関係なく誰でも受験できます。合格要件は:土質力学・基礎構造に関する知識を持ち、建築基礎設計士等の指導・助言を受けて、基礎構造に関する正しい計算や簡単なコスト計算等を行うことができるとしています。試験は学科試験のみです。

基本問題(2.0時間):基礎設計に必要な一般的な知識
実技問題(2.5時間):基礎構造の正しい計算等

なお、ここでいう「基礎設計」には、杭基礎(既製杭・鋼管杭・場所打ち杭)の設計だけでなく、地盤改良や直接基礎の設計も含んでいます。

建築基礎設計士・同士補の登録者

建築基礎設計士試験の合格者に与えられるのが、「日本版GE」ともいえる「建築基礎設計士」の資格です。なお、学科試験に合格後に面接試験で不合格となった場合は、「建築基礎設計士(学科試験合格)」とされ、今後2年間のうち1回の試験では学科試験が免除されます。また、建築基礎設計士補試験の合格者に与えられるのが、「建築基礎設計士補」の資格です。合格者は、それぞれの資格の保有者として登録されます。現在までの合格者と登録者の数は、グラフのとおりです。なお、このグラフの「認定者」は、本会が発足する以前の試験での合格者です。

2019年4月時点の登録者数は、以下のようになっています。

建築基礎設計士 ・・・・・・・・・・・・ 53

建築基礎設計士(学科試験合格) ・・・・・ 5

建築基礎設計士補 ・・・・・・・・・・・ 56名

注:建築基礎設計士補の合格者の総数は99名ですが、建築基礎設計士試験に合格すると登録者から除いています。

 

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