当会杉村義広代表理事が基礎構造に関わるいろいろな問題についてコメントする「いしずえ通信」。
今回は、第52号「新型コロナウイルス対策としての生活支援給付金」を掲載しました。
---------------------------------------------
いしずえ通信第52号(2020.4.17)別添
新型コロナウイルス対策としての生活支援給付金
(一社)基礎構造研究会代表理事 杉村義広
一律一人10万円給付の報道が急遽決まったとの報道が流れた。これを聞いた時にすぐに以下のような空想話を思い描いた。
「生活支援給付金の返金口座」といった名称のパネルを前にして、総理大臣が「国も大きな借金をして苦しい中で考えた政策であるので、国民の皆様にも可能な限りでの返金をお願いしたい」とのメッセージ付きで、自らの場合はすぐに返金するとのキャンペーンを張っているのである。そのことによって、閣僚、国会議員、高級官僚をはじめ、地方議会の議員、民間の経営者など高所得者と呼ばれる人々もこぞってそれに倣う動きが生まれるのではないか、と期待してのパフォーマンスであるらしい。
実際、これらの人々は10万という数字は雀の涙ほどにも感じない生活をしているのだろうから、総理大臣自らがこうした発言をしていることに触発されて自分も同調しないと虚仮にされると思うのではないか。その他、生活にかなり余裕を持っている人まで加えれば国民全体の1割くらいにはなるとも思えるので、それだけで当初の予算の9割で政策が実現できたことになるではないか、ということである。
さらに、災害があると多くの人々が募金に協力する優しさが日本人なので、全額までは無理としても何割かは返金したいものだと考える人が意外に多くいて〔かく言う筆者も余裕のある生活とまでは言えない暮らしをしているので、このように考えている一人であるが〕、それらの人々を算入すればかなりの人数になり、返金の額もさらに2、3割になるか、あるいはそれを超えることも期待出来るのではないかとさえ思えるのである〔ただし、総理大臣がこれまでの言動から信頼されていることが必要な条件となるのであるが、実際にはどうであろうか〕。
以上は空想であるが、政策を考えるときに種々の制限を付けると、派生する問題に四苦八苦することになって、なかなか事が運ばなくなるので、発想を転換して、制限を付けることなくすべて吐き出してしまう方が単純明快になることに気づくべきである。なぜなら、制限を付けることで生まれる“どこで線引きするか、緩やかな区別であるべきものが、ある一線での区別となってそれよりちょっと外れた者が該当者となれない”といった不公平が生じるという問題には無縁になるからである。また、賛同者からの返還を期待するという方式であれば、市民の側に判断を依頼する形になるので行政側が権力に任せて統制したとの批判を受けないで済むからでもある。予算的にも少ない額で意図していたものを実現できるということになるのではないか。
こうした政策は、市民に易しいという意味で多くの賛同を得ることにも繋がると思われる。
〔注〕今回は場違いな内容となったが、是非書いておきたいと思った結果であることを保筆する。